松尾由美『モーリスのいた夏』
"湯船に浸かれる日に書く"と決めてから、きちんと投稿できるようになった
人は緩やかな決め事に忠実らしい
今回も竹富島で読んだ本
松尾由美さんの『モーリスのいた夏』
松尾由美さんといえば現在公開中の「九月の恋と出会うまで」の原作者で『雨恋』でも有名な作家さん
なんとなくSFとか恋愛ものとかが苦手で(後者が苦手なのは決して妬みではない、決して)なんとなく避けていたけどタイトルに惹かれて読んでみることにした
今回の主人公は高校生の信乃
信乃は夏休みのバイトとして義父から小学生の家庭教師を提案される
有名デザイナーの娘、これまで帰された応募者が多数ということもあり望み薄くバイト先である別荘に向かう信乃だがあっさり合格
信乃は勉強の面倒をみると思っていたが雇い主の小学生、芽理沙から面倒をみて欲しいと頼まれたのは"子どもでないと見られない"人喰い鬼のモーリスだった
恐る恐るモーリスの面倒をみ始める信乃だったが来訪した編集者が崖から転落死、死体がなくなる事件が起こる
死体をなくした犯人をモーリスと決めつける信乃だが、そこからまた不可解な殺人事件が起こる……
という話
ぶっちゃけ、ジブリの「思い出のマーニー」的な素敵ファンタジーだと思っていた
だが実際にはそんなことはなく、テンポよく進む話、信乃の機微な成長と変化、モーリスの謎、登場人物たちの人間性など引き込まれていく
ただの青春のひとシーンだと侮ってはいけない
最初の信乃とラストシーンの信乃、ワガママだと思っていた芽理沙の共犯意識からくるのかもしれない優しさ
"あの時"、私たちが一瞬で過ぎ去ってしまった青くさくてなんとなくキラキラ見えて、漠然と終わってほしくないと願ったあの時の匂いを感じることができる
少女の成長物語だが、大人向けだとも感じる
小学生、中学生、高校生と私たち大人が同時に読んでもそれぞれ感じるものがガラリと変わる
自分の成長と一緒にこの物語も成長させたかった